リコーの360度カメラTHETAはサイクリングと親和性は高いのか?

以前、Insta360GOというアクションカメラを自転車で使ってみたら思いの外使い勝手が良かったので、調子に乗ってリコーの360度カメラTHETAについても自転車との親和性について調べてみたので、気になっている自転車乗りがいたら参考にしてほしい。

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今回は、2019年の夏に発売されたアクションカメラInsta360GOについて、購入してみたところあまりに自転車にマッチする機材だっ...

・THETAって何?


THETA SC2

THETAで検索してこの記事を読んでいる人には説明は不要かもしれないが、念のため補足しておくと、THETA(シータ)とは日本のRICOHが開発した360度の写真や動画を撮影することのできるカメラ製品のことである。
今でこそ、360度が撮影できるカメラと言えばInsta360GoProMAXが有名だが、THETAはその先駆けとも言える製品であった。
また、Insta360やGoProMAXは動画に重点を置いた製品だが、THETAは写真に重点を置いており、その性格は少し異なるかもしれない。(後述)

・サイクリングとの親和性について

早速結論から述べてしまうと、自転車との親和性は「高い」と言えるだろう。
もともとが自転車用に作られたわけではないので、非常に素晴らしいとは言わないが、それでもTHETAは自転車乗りにとって使いやすい製品だ。
その理由は以下の通りだ。

・形状が縦長である

「え、そんなこと?」と思われるかもしれないが、これは非常に重要なことだ。
自転車乗りのジャージに付いている背中のポケットは細長い物をうまく受け入れることができるように設計されていることもあり、THETAの形状は背中のポケットからの出し入れがしやすい。
これは一般的なリュックのサイドポケットなども同様だろう。
GoProやそれに類似したようなアクションカメラを持っている方ならお分かりだろうが、サイコロ上の機器は上記の様なポケットでの出し入れは非常にやりづらいものだ。
結果としてGoPro等は、ハンドルへ取り付けたり、ヘルメットに取り付けるといった取り付けを前提とした使い方が大半になってしまう。
一方でTHETAでは、スマホと同様にサッと取り出して撮影し、撮影が終わったらまたポケットにしまうという使い方ができる。


真ん中の背中のポケットに延長棒ごとスポッと入った状態

機材と言うのはどんなに高性能な物であっても、取り回しがしやすいかどうかでその機材への評価は大きく変わるものだ。
重すぎたり、大きかったり、形状が不安定であることはそれだけでデメリットとなる。
ましてや移動していることも多い自転車の上で使うには、持ちやすく使いやすい形状は大きなメリットとなる。

THETAのオプションになっている延長棒を使用すれば、さらにジャージからの取り出しや撮影の利便性が向上するのでお薦めのアイテムだ。


延長棒TM-2

・使う時からしまう時まで考えられている

360度カメラという特殊性から、製品本体には飛び出たレンズが2つ付いており(どのメーカーの製品でも)、これを傷つけないようにする必要があるのだが、THETAに付属のソフトカバーは製品をすっぽりと包む形状になっており、出し入れもしやすく、出し入れの際にレンズに傷がつくようなこともない。

また、レンズにはハードコートが施してあるので、ちょっとしたことではレンズに傷はつかないので安心してほしい。
実際に自転車に乗って撮影中に木の枝にレンズをぶつけてしまったのだが、目視では全く傷はついていなかった。
さらに電源のON/OFF以外にスタンバイ状態があるので、ライド前に電源を入れてからスタンバイにしておけば、無駄にバッテリーを消費することなく、素早く撮影に移行することができる。(なお、一日ライドして小まめに動画や写真を撮影してもバッテリー残量は40%程あった)
この機能も利便性に大きく寄与している。

・広角を超えた画角で思い出を残せる

最近のスマホは高性能になっており、超広角で写真を撮ることができるが、THETAであれば360度の写真や動画を撮ることができる。
グループライドや山や海の絶景も余すことなく録画、撮影することができるのは、スマホに対しても大きなアドバンテージと言えるだろう。
もちろん撮った写真や映像は、アプリを使って切り出すこともできるので、一般的なスクウェアな写真として残すことも可能だ。
また360度で撮影しておくと、あの景色の裏側に何があったかや、グループライドならその時のメンバーの行動まで思い出にすることができるので、後で見返した時にライドのストーリーをすぐに思い出すことができる。

FACEBOOK等のSNSやYoutubeで共有すると、自動的に360度画像や動画として認識されるので、特別な編集や加工のステップを踏まずにアップロードできる。
絶景とグループライドを同時に撮影してみた

・操作が明瞭である

これも自転車に乗る上では、大きなポイントだろう。
撮影は至って簡単だ。
正面についている丸い大きなボタンを押すだけだ。
ボタンを押したときには少し大きめのデジタル音が鳴るので、撮影されていることは容易に判別できる。
ビデオと写真を切り替える時はサイドについているモードボタンで切り替えるが、このボタンだけは少し小さいので押しづらいが、ボタンの間隔がそれぞれ離れているので、グローブなどを付けていても他のボタンを同時に押してしまう様な事はないだろう。

・ハードだけでないソフトの完成度

これは個人的に予想外だったのだが、国内メーカーの製品と言うのはハードの造りは良いが、スマホ用のアプリはまともに使えない(又はあまり使う気になれない)という製品がとても多い気がする。
その点、このTHETAのスマホ用アプリはかなり気合いが入っており、個人的にはInsta360GO用のアプリよりも使いやすいと思っている。
アプリが二つに分かれており、カメラから動画や写真を転送するのはTHETAというアプリで、編集をするのはTHETA+となっている。
THETAアプリでのカメラへの接続も非常に簡単で、カメラの電源を入れれば比較的すぐにカメラを認識してカメラの操作、設定やデータ転送を行うことができる。

THETA+では、更に撮影した写真や動画の編集(アングルの修正やカット、フィルター調整など)を行うことができる。
また、二つのアプリは連動しているため、THETAでデータを確認したらそのままTHETA+アプリで編集が可能になっている点もうれしい。
SNSが主流の現在、撮影したデータをすぐに編集して共有するということにも上手く対応している点は、国内メーカーの製品としてはかなりポイントが高いと言える。

延長棒は撮影の際、自動的に消してくれるので何か特別な作業は必要ない。

・製品の違いについて

今まで一括りにTHETAと言ってきたが、THETAには5種類のモデルがある。
リコーの製品ページで分かりやすく比較することができるので、下記を参照してほしい。
RICOH THETA ラインナップの比較
この項では、THETA同士の比較と他社製品との比較を簡単にしてみよう。

・THETA製品内での違い

【重量】

Z1>S>V>SC2>SC 軽


最軽量モデルのSC

形状においてはほぼ同じで重量は102g~182gの間になっている。

【発売時期】

SC2>Z1>V>SC>S 旧


最新モデルのSC2

5種類の現行モデルがあるが、発売時期はそれぞれ大きく異なり、「Z1」と「SC2」は2019年12月発売で、「V」「SC」「S」は2015年~2017年の製品となる。

【性能】

Z1>V≧SC2>SC≧S 低


安価で長時間の撮影に対応したS

スペック的には「Z1」は「V」の後継、「SC2」は「SC」の後継製品といった感じだ。
「S」だけは、登場は2015年と少し古いながら、動画の連続撮影時間が最新の「Z1」や上位機種の「V」と同様の25分となっている(SCは5分、SC2は3分)
「S」と「SC」では価格はほとんど同じなので、長い動画を撮る人は「S」、そうでない人は「SC」シリーズを選択すればよいだろう。

【価格】

Z1>V>SC2>S>SC 安


1インチセンサーを搭載したZ1

最上級モデルとなる「Z1」では、コンシューマー製品としては唯一の1インチセンサーを搭載しており、重量は182gで値段も11万円と高いがシリーズ中圧倒的な高画質を実現している。
予算に余裕があり機能や画質にこだわりたければ、「Z1」一択となるだろう。
一方で普及帯となる「SC2」では、基本性能は「Z1」に準じながらセンサーサイズを1/2.3インチとすることで、3万円台まで価格を抑えたモデルとなっている。
「SC」との大きな違いは、手振れ補正対応と内蔵メモリの強化(8GBから14GBへ)、表示パネルで、その他は小変更にとどまる。
重量は104gと軽量なので、自転車乗りには一番使いやすいモデルかもしれない。

・他社競合製品との違い

主に競合製品となるのは、Insta360とGoProMAXだろう。
この2機種との大きな違いは、価格と防水性能と連続動画撮影時間だ。

・価格

ここでは、各社の比較的最近発売された代表的な製品をAmazon価格で比較してみよう。(2020年4月26日現在)


THETA Z1:¥115,000-

重量:182g
発売時期:2019年5月


THETA SC2:¥33,455-

重量:104g
発売時期:2019年12月


Insta360ONE:¥28,980-

重量:82g
発売時期:2017年8月


Insta360ONEX:¥48,427

重量:115g
発売時期:2018年10月


Insta360R(360°カメラモジュールパッケージ):¥55,000-

重量:130.5g
発売時期:2020年2月


GoProMAX:¥56,997-

重量:154g
発売時期:2019年10月

唯一、1インチセンサーを搭載したTHETA Z1は性能の分価格も飛び抜けている。
Insta360ONEが最も安いが、登場時期を考えれば他の製品が高いということではなく妥当と言えるだ。
THETA SC2とその他の製品を比べると価格差は比較的大きいが、THETAは防水性能がないので、そこは購入ユーザーの考え方によって変わって来るかもしれない。

・防水性

防水性については下記の通りだ。

THETA:×(オプションの水中ハウジングが必要)

水中ハウジングTW-1

Insta360:△(最新のInsta360Rのみ水深5mまで対応。その他の製品はハウジングが必要)


最新のInsta360R

GoProMAX:○(本体のみで水深5mまで対応)


GoProMAX

THETAのみ防水性能はなしだ。
他の製品は防水性があるが、上記のとおり価格とのトレードオフと言えるかもしれない。

・連続撮影時間

次は連続撮影時間についてだ。
ここも必要性の分かれるところだが、一応比較しておこう。

THETA Z1:25分
THETA SC2:3分
Insta360:ほぼ制限なし(バッテリーに依存)
GoProMAX:ほぼ制限なし(バッテリーに依存)

・その他

直接の性能とは関係ないが、THETAは三脚用のネジ穴が用意されている。
GoProやInsta360Rでは、良くあるアクションカメラ用のマウントになる。(Insta360シリーズは一部ネジ穴あり)
一般的な三脚をアダプタ無しで利用できるのは、人によってはうれしいだろう。

【まとめ】個人的に考えるTHETAの魅力とは

今までの比較内容をぶち壊す様で申し訳ないのだが、実はスペック的にはTHETAは性格的にはアクションカメラではない。
メーカーもアクションカメラとは謳っていないし、何より性能面で見ると良くわかるだろう。
個人的な感覚で言うと、「動画も撮れる360度インスタントカメラ」と言うのがしっくりくる。

【360°】阿蘇のミルクロードをサイクリング

では、なぜ他のアクションカメラには性能的に引けを取るTHETAが自転車乗りに向いているのか。
最初に述べたように、まずはその形状だ。
これはカメラのスペックよりも大切だと個人的には思う。
比較対象とした防水性で考えれば、雨の中自転車に乗ることは少ないし、ライド中に雨が降ってきたらジップロックやビニール袋に包めば良いだけだ。(汗に対しては付属のソフトカバーで対応できる)
それよりも、個人的には機器の形状による取り回しの方が使用に大きな違いをもたらすと思う。
また良くあるニーズとして、海でも山でもハードに使いたいというのがある。
そのような使い方であればInsta360RやGoProMAXは良い製品だと思うが、実際にそういった使い方は稀で、結局それぞれの用途に合った製品を選ばないと、なにかと中途半端になりがちなものである。(そして中途半端だと使わなくなる)

連続撮影時間にしたって、例えばあるルートの360度動画をローラー台と連動させて利用したいという確固たるニーズがあれば、連続撮影時間は大切な項目になる。
ただ多くのユーザーの使い方としては、サイクリングの様子をまとめてSNSで共有したり、思い出として保存しておきたいといったライトな使い方だ。
その場合、ライド中、小まめに撮影をするとしても、連続撮影時間としてはせいぜい1分程度で済むはずだ。
場面ごとにボタンを押すだけで、連続で撮影し続ける必要はないのだ。(Insta360GOなどでは30秒撮影がデフォルトで、これはよく考えられていると思う)
仮に連続撮影するとして、重量や設置方法からしてどこにそれを取り付けておくのかも大きな問題となるだろう。

また連続撮影において最も大変なのが、そのデータ量だ。
一般的なアクションカメラでも1分の動画で200~300MBほどになるのに、360度カメラともなれば、そのデータ量は倍以上になる。(もちろんビットレートやfpsによって差はある)
仮に10分撮影すれば5GB以上になり、動画の転送だけでも相当な時間が掛かる。(編集は尚のこと大変だ)
仕事で使うならばそれも許容できるかもしれないが、趣味であれば想定外のストレスとなるだろう。

そういったことから考えてもTHETAのスペックは理にかなっており、ましてやその形状は自転車乗りにはべストなものだと考えられるのだ。